改定入管法の一部施行にあたり、声明を公開しました

弊団体では、本日一部施行された改定入管法についての声明を公表しました。
前半で国際人権法における補完的保護について整理した上で、後半では本日施行された改定法について具体的な意見を述べています。

【ポイント】

補完的保護について国は、保護の対象者を広げると共にウクライナから逃れた人の法的地位が安定すると主張しています。しかしながら条文を見てみると、国際人権法上の補完的保護とは全く異なる制度を構築したと言わざるを得ず、国際人権法上国家が負っている義務を適切に果たしていくことが出来るのか、大きな疑問が残ります。

ウクライナから逃れた人については、相当数の難民が含まれることが考えられるのにも関わらず、入管庁が彼ら/彼女らに対して補完的保護についての説明ばかりをおこなうことで、本来難民認定されるべき人に対しても難民認定申請でなく補完的保護対象者認定申請をするよう奨励しており、非常に不適切です。これでは、日本が国際人権法上負っている難民の認定やルフールマンからの保護などを適切に果たしていくことはできないと考えます。

それどころか、法は難民や補完的保護対象者として認定された人に対して退去強制令書が発付された際には、難民認定証明書・補完的保護対象者認定証明書の返納を義務付けています。これは、国際法上認められた自身の法的地位を証明する唯一の手段である認定証明書を、国際的保護の必要性の評価とは関係のない退去強制の文脈ではく奪するものであり、容認することはできません。

名古屋難民支援室は、日々のケースワークにおいて法的支援・社会的支援を支援対象者に提供し、それぞれの方に適切な保護が提供されることを目指し、難民や国際的保護を必要とする人の一人ひとりに寄り添った支援をこれからも行います。その中で、従来から難民認定を求めてきたのと同様に、難民には該当しないものの国際人権法上の補完的保護により保護されるべき人に対しては、入管法上の補完的保護対象者として認定されるよう、支援を行います。

また、これまで国や地方公共団体が行っていたウクライナ難民への支援の中で生まれたグッド・プラクティスについて、他の補完的保護対象者や難民に対しても同様の支援が広がっていくよう、関係機関・団体と連携しながら求めていきます。

名古屋難民支援室は、ケースワークや政策提言を通して引き続き、より良い入管法制、難民認定・保護制度の実現を目指していきます。